その町はとても静かだった。
彼は模型飛行機を作る仕事をしていた。
小さな部品を操る繊細な指先。
息を止めて慎重に色を塗り、
大きな翼をいよいよ取り付けるときには、
そのたびに胸をときめかせていた。
トール。
彼の細い手足や茶色い瞳は青年というよりむしろ、
少年といった方がふさわしかった。
トールはときどき思い出していた。
TOKYOにいた頃のことを。
あの頃は、大好きな仲間たちと、
大好きな音楽を、ブンブン鳴らしていた。
ツェッペリン、グランド・ファンク、
それから頭脳警察・・・・・。
そして自分たちだけのオリジナル・ナンバー。
ロバート・ヤングの短編小説をモチーフに詩を書いて、
曲はもちろん、ハードロックのスパイスをたっぷりかけたもの。
・・・・・・またいつか、TOKYOのライブハウスで、
あんなふうに何もかも忘れて音楽ができたら・・・・・・!!
トールの想いを乗せた模型飛行機は元気良く空に飛び立ち、
しかしやがて至近距離に無雑作に着陸した。
ある日、トールのもとに一本の電話がかかってきた。
かつてトールのバンドが出演していたライブハウスのオーナー、
F氏からだった。
“元気か?”
相変らずのぶっきらぼうな声。
トールは懐かしくて、少し笑いながら
“元気だよ”と答えた。
“なぁ、バンドやらないか?”
F氏の突然の誘いに、トールは自分の耳を疑った。
“えっ、バンド!?
“すごくいいメロディーを書くやつがいるんだ。
そいつとお前とで、絶対いいものができるぜ”
トールはその日のうちにTOKYOに再び迎う日時を決めた。
少しも迷いはなかった。
(模型飛行機はいくら作っても、やっぱり模型でしかないからね)
まるでタイムスリップしたように、
トールの記憶は、
TOKYOのライブハウスでギターを弾いていた頃の自分に戻っていた。
「ときどき、
オレどうしてここにいるんだろうって思うよ。
でも異常に好きみたい。
ここでこうして歌ってることが」
1986年~1987年
「LOOKIN' WONDERLAND TOUR ワンダーランドより愛をこめて。」
のコンサートのパンフレットから
1985年、4月21日
「シャイニン・オン 君が哀しい」 でLOOKがデビュー
私が持っているLOOKこれで全部
アルバム・・・レコード3枚・・・
BOYS BE DREAMIN'、LOOKIN' WONDERLAND、WINGS
何故かひとつだけカセットテープ・・・OVER-LOOK
シングルレコード1枚・・・追憶の少年
1度だけ行ったコンサートのパンフレットとチケット
黄色いバッジ
25年前、私はLOOKの熱烈なファンではなかった
その当時、私は完璧、アルフィーのファンだった・・・もちろん今でも大好きで・・
でも、唄は好きで、ほかにもいろんな人の唄を聴いていた
LOOKはそのなかのひとつというだけだった
でも、LOOKのファーストアルバム「BOYS BE DREAMIN'」を聴くと
25年前の夏、夢に向かって頑張っていた自分をはっきりと思い出す
他にもたくさんの唄を聞いていたはずなのに
LOOKのコンサート、1度だけ行きました
ちょうどクリスマスで
チープさんがサンタさんの衣装を着て出てきた
記憶にあるのはそれだけ
どんな曲をやって、どんな感じで・・・・
全然覚えてない
25年後、あの日の夢とは全然別の場所にいるけれど
LOOKの曲はいまでも、私に元気をくれます。
ありがとう。